2007年12月21日

第九回のゲスト:多岐川舞子さん

丹まさとと語る演歌もう一杯!

第九回のゲスト:多岐川舞子さん
今回のゲストは、澄んだ歌声で女性の切なさを見事に歌い上げる多岐川舞子さん。デビュー20周年第一弾シングルとして来年1月23日に発売される「飛騨の恋文」を先取り。奥飛騨を舞台にした詩世界を丹氏が読み解きました。



【凛とした女性を映す飛騨の景色】
:1月に新曲「飛騨の恋文」を出されますね。詩に出てくる〈飛騨の白河〉というのは、世界遺産(白川郷・五箇山の合掌造り集落)のあるところですよね?
多岐川:そうですね。昔ながらの伝統的な風景を舞台に書いていただいたと思います。この歌の女性は飛騨の生まれではなく、彼を忘れるために飛騨に行っているんですけれど、歌っていても飛騨の美しい景色が鮮明に浮かんでくるんですよね。濁っていない古風な映像と共に、女性のやるせない気持ちが歌に託されて。
:二番の〈飛騨の細道 昨日を捨てに/いくつ足跡 残したら/あなたの想い出 消せるでしょうか…〉というのは、山の険しい道で、昨日=過去を忘れるために、お百度参りをするようなものなんでしょうね。何回も往復して、どれだけ体を、心を痛めれば、あなたの想い出を消せるのでしょうか、と。
多岐川:彼へのいろんな想い出を、飛騨を旅して歩いたら、いつか忘れられるかと。私はそういうイメージで捉えてましたけれど、お百度参りと言われると、そういう深い捉え方もあるんですね。
:ひとつのドラマですよね。三番の〈紅葉灯りの 手摺にもたれ/深いため息 またひとつ〉というのは、全体を読んで見ると宿でのことを書いているわけですね。紅葉の下で手摺にもたれながら、「彼はどうしているんだろう」とため息をついた時に、〈飛騨の三日月 この手に取って/ 乳房(むね)の奥まで 刺したなら/あなたに抱かれて 死ねるでしょうか…/明日はいらない あゝ月の宿〉と。月の宿と三日月をかけているんですよね。これを“一人宿”にしたらつまらないので、“月の宿”というのはとてもよくできてると思いますね。
多岐川:その歌詩のような情熱的な女性なんですけれど、この風景がとても綺麗にしてくれていますよね。これがもし情念のあるような場所だったら、ドロドロした感じで演じないといけないなと思うんです。でも、飛騨ということで格調高く、この女性自身も本当に綺麗に生きてきた方なんじゃないかなと。彼を忘れられないから海に飛び込みたいとかではなく、彼の幸せのためにそう思うけれども、という凛とした女性の像が出てきて、飛騨の力はすごいなと思いましたね。
:飛騨はとても寒いところだけど、とても空気が綺麗なんですよね。多岐川さんは声が綺麗で澄んでいるから、そういうことも含めて、三日月が澄みきって見えるということを荒木とよひさ先生は書かれたんでしょうね。
多岐川:ありがとうございます。光栄です。これまでは切ない女性の歌が多かったんですけれど、今回は琵琶の音からジャジャ〜ンと入って、古の街という言葉がぴったりの雰囲気ですし、メロディーもちょっと古風な使い方をしていただいて。今までの私の歌にはない、またちょっと違った色の作品だなと思います。

多岐川舞子【「あんたは演歌やで」】
:小さい時から歌手になる夢をお持ちだったのですか?
多岐川:そうですね、父の影響が大きいんです。昔、父は歌手になりたかったのですが、歌手を目指したのが遅かったということもあって、夢破れてしまい、自分に子供ができたら夢を託そうと思っていたそうです。私は3人兄妹の真ん中なのですが、3人とも小さい頃に父から歌を教わっているんです。兄も妹も上手だなと思うんですけれど、年頃になると、兄はスパルタの教え方にちょっと反発しつつ、妹は“お姉ちゃん頑張って”と、2人ともやめてしまいました…。
:じゃあ、お父さんに似たのかな?
多岐川:そうかもしれませんね。父は若い時に五木ひろしさんと同じ学校に通っていたそうで、話を聞くと本当に一生懸命歌手を目指していたそうです。それで私も毎日毎日歌のお勉強をして、父がいない時はカセットに歌を吹き込んで、帰宅した父に今日はこうやって勉強したんだということを聞かせていました。とにかく小学校、中学校の頃は、学校から帰ってきて歌の勉強をしないと、家庭が一日険悪なムードになっていたんです。その後、のど自慢やカラオケ大会に出場したりしまして、13歳の頃に「スター誕生!」にも出場しました。1〜2週目は演歌を歌って勝ち抜いて、3週目に岩崎宏美さんの歌を歌ったら落ちてしまったんです。その時に司会をしていた横山やすしさんに、「あんたは演歌やで」と言っていただいて。幼少の頃はいろんなものを歌える歌手になりたかったんですけれど、その言葉をきっかけに方向性を決めないとダメだなと思いました。
:それで演歌に専念しようと。
多岐川:はい。「スター誕生!」では点数が2点足りなくて落ちてしまいました。その1点ずつが近江俊郎先生と弦哲也先生だったのですが、その時に弦先生から、「演歌を歌うには、まだまだいろんなものを経験して、磨いて磨いて、ちゃんとダイヤモンドになれるように頑張りなさい」と言っていただきました。後になって先生とお仕事をさせていただく機会もあり、本当に嬉しかったですね。「あの時は先生に落としていただきまして」って、今では笑い話になっています(笑)。
:ハハハハハ(笑)。
多岐川:その後、高校1年の時にNHKの「勝ち抜き歌謡天国」に出場するチャンスがあり、そこで、のちの師匠となる市川昭介先生とお会いすることができました。先生からは「高校を卒業してから上京しなさい」と言っていただいて。高校時代は月一回のペースで京都の実家から神奈川の先生のお宅へ、日曜日を利用してレッスンに通いました。朝8時に自宅を出まして、先生のお宅まで片道約6時間かかったのですが、滞在できるのは2時間ほどでした。でもそこで“人として”ということをたくさん教えていただいて。それを高校1年から続けたのですが、卒業する頃にはレコード会社も事務所も全部決めて下さっていたんです。そして高校卒業後上京し、18歳から1年間、いろんな礼儀作法を――全然身に付きませんでしたけれども(笑)――勉強しまして、19歳でデビューさせていただきました。本当に幸運だったと思います。

丹まさと【着物って大変なんです】
:多岐川さんは着物がとてもお似合いですよね。以前、多岐川さんのポスターを見た時に、その佇まいがとても素敵だなと思って。例えば、マイクの持ち方とか、ステージでの所作とか、どんなところに気を遣われていますか?
多岐川:デビュー当時は着物に似合う所作は?ということをよく考えていましたね。今でも悩むことはあります。着物を着るのであれば、やっぱり斜めに構えたほうが綺麗なラインで見せられるのではないかとか、まだまだ勉強中です。
:例えば石川さゆりさんは帯を斜めに締めたり、島津悦子さんはゆっくり大きな動作をすると仰られてました。
多岐川:手の表情はよく言われましたね。フリをするのでも大きく。ただ、取って付けたようなものだと良くないので、手をこの辺まで上げると袖が落ちないで綺麗だとか。もっと大きく見せられればいいんですけれど、着物って大変だったりするんです。
:着物姿で歌っている品はとても綺麗ですよ。みんなが参考にしたいと。
多岐川:本当ですか? そんなこと言っていただけるのは丹先生だけですよ。
:本当ですよ(笑)。以前行ったカラオケ屋さんに、多岐川さんが歌っている姿が額に入って飾ってありましたから。
多岐川:ありがとうございます。嬉しいです。

【歌は生きているもの】
:ところで、ステージに立った時に一番感動する瞬間は?
多岐川:やっぱり“歌が伝わったな”と感じる時ですね。どんなステージでも、どんな場所でも、納得いく歌が歌えて、伝わったなぁと思う瞬間は、何物にも変えがたい幸せを感じます。
:それは拍手の量とかで感じるものですか?
多岐川:“この歌をこういう風に表現したい”ということがちゃんとできた時に、“伝わったはずだ”と思う瞬間があるんですよ。そうしたらやっぱり、聴いてくださったみなさんの表情や拍手にも現れますし。もちろんいつもそうなるように歌っているつもりなんですけれど、歌って生きているものだと思うので。それを感じることができた時はすごく嬉しいですね。まだまだ、努力、努力です。
:来年は20周年になりますけど、今後の夢は?
多岐川:やっぱりライブ感というのがとても好きで、お客さんとの一体感、一緒になれたという瞬間を日々感じてステージに立てるようになりたいと思います。テレビの仕事だったりとか、歌手としてもいろんなジャンルの仕事があると思うんですけれど、ステージで生の歌を届けられる、そういったコンサートがコンスタントにできる歌手になりたいなというのが、大きな目標です。
:ステージがお好きなんですね。20周年という部分では?
多岐川:やりたいことはいっぱいありますけれども……、5周年、10周年、15周年の時も、後になって振り返ってみるとすごく印象深い1年でした。ただ、今まで頑張ってきた歩みの結果だと思うので、そんなに気負うことなく、一生懸命に心を込めて歌えればと。通過点のような気持ちで次に向かっていきたいという20周年にしたいなと思っています。



【多岐川舞子 / プロフィール】
1969年生まれ。京都府出身。1985年、NHK「勝ち抜き歌謡天国」奈良大会でチャンピオンに。その時、市川昭介氏の目に留まり師事を始める。高校卒業と同時に上京し、1年後の1989年に「男灘」でデビュー。歌詩の中の“なんちゃらほい”が話題を呼ぶ。代表曲に50万枚のビッグ・セールスとなった「あんたの海峡」をはじめ、「夢織り酒場」「津軽望郷譜」「幻海峡」「信濃川」「津軽絶唱」などがある。
公式サイト:http://www.maiko-club.jp
『飛騨の恋文』 2008年1月23日発売
CD:COCA-16054 カセット:COSA-1946
1,200円(税込) コロムビアレコード
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