2008年02月04日

第十一回のゲスト:伍代夏子さん

丹まさとと語る演歌もう一杯!

第十一回のゲスト:伍代夏子さん
演歌の作詩家にして「富士そば」社長という異色の経歴を持つ丹まさと氏が、毎月演歌歌手をお迎えして、独自の視点から演歌の魅力をお伝えする当連載。今回のゲストは、昨年末の紅白歌合戦でも情感豊かな歌声を披露してくれた伍代夏子さん。話を聞けば聞くほど、根っからの歌い手であることを感じさせてくれる対談でした。(撮影:綿谷和智)


【舞台は「京都二年坂」】
:2月20日に新曲「京都ニ年坂」が発売されますけど、京都の歌は初めてですよね?
伍代:そうです。関西ものは初めてなんです。
:伍代さんはバリバリの江戸っ子らしいですね。
伍代:はい。祖父の代からずっと魚屋をやってましたから。みんな気が短くて(笑)。でも、京都の女性はよく「はんなり」とか「おっとり」って言われますけど、京都の女将さんなんかを見ると、みんなしっかりしてますから、そんなに江戸っ子と京都の女性に違いはないのかな、なんてスタッフとも話していたんですよ。
:歌う上では難しいところはありましたか?
伍代:京都の感じだからっていう意味ではそんなに苦労は感じませんでしたね。〈おくれやす〉とか京都の言葉もありましたけど、台詞ではないし、メロディーがついているものなので、それは難しいとは思いませんでした。
:この「京都二年坂」は、結婚はしたけど、旦那さんを失ってしまって、自分がお店を継ぐことになってしまった。だけど、しょせん男とは違って、自分は器も小さい裏方さんだと。あなたのようにはうまくいかないから、女の私には荷が重いのよ。という歌なのかなと。京都の二年坂(二寧坂)って言ったら、櫛(くし)とか簪(かんざし)を売ってるようなお店がいっぱいあるので、こういうお店をつれづれに引き継ぐことになったのかなと思ったんですけど。
伍代:この歌に出てくる女性は、今はヘコんでいるけれども、これから細腕繁盛記のように、この店の看板となって成長していくんだと思うんですよ。その一見しっかりしてそうな女性が、ちょっと今はヘコんでいて、愚痴をこぼしたり、ちょっと弱いところが出ている歌かなと思うんですよね。
:伍代さん自身は、こういう女性への共感はいかがですか?
伍代:今は女性がバリバリやる時代ですし、こういうことも普通なのかなと思うんですよね。たぶんこの歌は、今がんばってらっしゃる京都の女将さんたちが、ちょうど嫁いできた頃の歌なのかなと。まだ頼りないんですけど、この店をやっていくんだと決心する。歌の結末としてはここで終わっているんですけれど、この10年、20年後に立派な女将さんになっている、というのが私のイメージなんです。だから、嫁いで間もない頃に旦那さん失くしてしまったときの歌なんでしょうけど、昔話として明るく歌っています。

【やめられないんですよね、演歌って】
丹まさと:伍代さんはそういうストーリーを自分の中で作り上げてから歌うタイプなんですか?
伍代:私は最初に歌をいただくと、その女性の姿形を思い浮かべて、映像まで勝手に出てくるんですよ。いくつくらいで、どんな風貌で、手を差し伸べなければいけないような女性に作らなければいけないとか。そういうイメージを作らないと声の音色ができてこないので、まず一番最初にその女性を作るんですね。綺麗な人なのか、愛嬌のある人なのか、どんな着物を着てるのか、髪は長いのか短いのか、それはもう歌をいただいときに、ぱぁっと感じるんです。でも、その最初に感じたイメージはどうしても変えられないんですよね。例えば作詞の先生から、「なっちゃん、これは万々歳の幸せな歌なんだよ。だからもっとニコニコ歌ってくれる?」って言われても、「先生、違うんです。申し訳ないんですけど、私のイメージの中では……」というように、勝手に出てきたイメージは、どうも変えられないんですよ。ただ、おもしろいもので、それが10年経ってくると変わってきたりするんです。そのときは頑なに変えられなかったものでも、女心っていうのは本当に裏腹なところがあって(笑)。長いこと歌っていると、「あ、そうなんだ」って気付かされることがあったりするから、やめられないんですよね、演歌って。
:へぇ〜、おもしろいですね。
伍代:それと、冷静に聞くと、作詞と作曲の先生で別のイメージをしている場合もあるんです。私は真ん中でそれを形にしていく立場ですよね。作詞の先生からはピンク色っぽいイメージと言われても、作曲の先生の話を聞いて歌うと、とてもピンクにはならなくて、紫色になっちゃったり。それを近づけていくわけなんですけれど、ピンクだと言っている先生も、紫だと言っている先生も、納得させるような歌ができたときが歌い手冥利に尽きる瞬間ですね。だから、お客さんの前での歌うことも好きですけど、新曲を作るときもまったく違う形で楽しんでいますね。

【楽譜に描けるものはコブシじゃない】
伍代夏子さん:伍代さんの歌は、とても個性が強くて、楽譜通りじゃないですよね。
伍代:楽譜通りは無理ですね。演歌はそれが味だと思うので、ここで一節入れるのよって言われても、入らない人は絶対に入らないんですよ。どれだけ練習をしても、楽譜に描けるものはやっぱりコブシじゃないんですよね。
:伍代さんのように歌いたいという人たちに、歌うコツを教えてあげるとしたら?
伍代:頑張って音符で節を追わないことですかね。例えばコブシをまわそうと思うのであれば、鼻歌みたいにお風呂で気持ちよく歌うことでしょうか。演歌を知らない人にコブシを教えるのであれば、演歌の匂いとはちょっと違うかもしれないですけど、スティービー・ワンダーとか久保田利伸さんとか、あんな感じかなと思うんですよね。
:優しいことのようにおっしゃいますけど、とても難しいでしょうね(笑)。でも、それで大衆を納得させられるのが演歌歌手なんでしょうね。
伍代:納得させようと思っていたときもありましたけど、すべてのお客さんの脳裏に、自分の描いた景色と同じ映像が浮かんでいるかと言ったら、まず無理ですからね。ただ、景色は自分が思い描いてるものと違ったとしても、その人の表情はわかるじゃないですか。「この人は顔で笑ってるけど心で泣いている」とか。そういったものを感じてもらえるように歌えればいいなと思いますね。演歌は特にそうなんですけど、女性が男性にとって都合よく描かれている場合が多いじゃないですか。一人の男性を想い続ける、待ち続ける、すべてを許容してしまう、とかね。でも、「私はあなただけを想って、日陰でずっと待っています」と言いつつ、目がすごく怒ってたり(笑)。すごく弱々しく描かれた待ち続ける女性なのに、長年一人で生きていける強さがあったり。そういったものが段々おもしろくなっていくんですよ。弱い女性を歌っていて、男の人から「なっちゃんいいねー」なんて言われつつ、女性からは「本当は違うのよね。わかってるのよ」って、女性からも共感を得られると、どんどん楽しくなってくるんですよ。男の人にはわからないところがあるのよねって。これが演歌のおもしろいところですね。


【プロフィール / 伍代夏子】
1961年生まれ。東京都渋谷区出身。1987年「戻り川」でデビュー。翌年の"全日本有線放送大賞""日本有線放送大賞"で、演歌では初の最優秀新人賞をダブル受賞。その後も「水なし川」「忍ぶ雨」「恋挽歌」など立て続けにヒット作を発表し、数々の賞を受賞。1990年には紅白歌合戦に初出場(以降、昨年末までに計14回出場)。舞台公演も行うなど、幅広く活躍。2月20日に初の上方演歌「京都二年坂」を発売する。
公式サイト
http://www.voicemusic.co.jp/natsuko/
『京都二年坂』『京都二年坂』
【通常シングル】c/w:恋しぐれ
CD:SRCL6741 カセット:SRSL3636
¥1,200(税込)
【お得シングル】
※通常シングル収録曲に加えて、ヒット曲「水なし川」「雪中花」を収録
CD:SRCL6740 カセット:SRTL2194
¥1,500(税込)
共にソニーレコード 2月20日発売
posted by staff at 15:17| 対談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする