
第十回のゲスト:南かなこさん
今回のゲストは、確かな歌唱力と天真爛漫なキャラクターが魅力的な、ブラジル出身の南かなこさん。“ふるさと”をテーマにした新曲「ふるさと帰行」は、親元を離れた経験を持つすべての人に是非お聴きいただきたい名曲です。(撮影:綿谷和智)
【元気な時にしか両親には電話しないんです】
丹:1月23日発売の「ふるさと帰行」は、木下龍太郎先生の作詩ですね。一番好きなフレーズはどこでしょうか?
南:〈母の言葉を 聴きたくなって/そっと電話に 触れてみる〉という歌詞が一番好きです。私は14年前に家族と一緒にブラジルから日本に来て、高校卒業と同時に上京して一人暮らしを始めたのですが、両親は3年前にブラジルに帰っているんです。だから、ふるさとが遠い分、帰るに帰れないという想いがとても強くて……。本当に等身大の曲だと思います。この曲をレコーディングする時は、胸が熱くなって泣いてしまったり、思うように歌えなくなったり、ということもありました。
丹:1番の〈帰りたいけど まだ帰れない/遠い列車の 笛に泣く〉という部分もポイントだと思います。
南:そうですね。距離の遠さもありますけれど、やっぱり何かを掴んでから帰りたいなという想いがありますので、この歌詞はジーンときますね。
丹:〈遠い列車の 笛に泣く〉というのは、自分の夢にはまだ遠いということを、遠くに走る列車とかけているんでしょうね。1番は郷愁を、2番では親との絆を歌っていますね。
南:はい。一緒に住んでいると、ありがたみも薄れてしまいがちなのですが、いざ離れてみると、“こんなにいろんなことをしてくれていたんだ”という感謝の気持ちが溢れてきて。親という存在の大切さを改めて実感しました。
丹:〈目には見えない 結び目の/絆が心の 拠り所〉。これが木下先生の一番の教えでしょうね。本当に上手い。なかなかこの言葉は出てこないと思いますよ。それで最後に〈母の言葉を 聴きたくなって/そっと電話に 触れてみる〉と。泣かせますね。
南:本人が泣いてしまっているんですけど(笑)。電話もかけるにかけれないんですよね。私は自分が元気な時にしか両親には電話しないんです。やっぱり辛い時に電話をすると、親にはすぐわかってしまいますので。
丹:親は心配しますからね。でも、寂しい時、辛い時、いつでも帰っておいでっていうのがふるさとですよね。この曲は“ふるさと”というテーマを膨らませた、本当にいい歌だと思います。最近の若者にもきっと響くでしょうね。
南:そうなんです。先日も私と年齢の近い方が、この歌を聴いて泣いてくれて。一人暮らしを経験された方は多いと思いますし、こういった想いを持っている方は、年齢を問わず、たくさんいらっしゃると思うので、頑張ってより多くの方々にこの歌を届けたいと思います。
【ブラジル移民100周年】
丹:カップリングの「愛愁ルンバ」も素敵な歌ですよね。神戸に生まれた女性が(ブラジルの)サントスへ移民して、〈情熱のまち〉で夢を探して。南:2008年は日本からブラジルへの移民が始まって100周年になるんです。それで私がブラジル出身ということもありまして、ふるさとを大きなテーマに曲を作っていただきました。ブラジルにいる日系の方たちが日本を想う気持ちだったり、日本にいる方々がそれぞれの故郷を思う気持ちを歌っています。
丹:移民が盛んだった頃は、日本はみんな苦しくて、ブラジルへ行った人が多いんですよね。この歌の女性も夢を求めてブラジルへ渡って、そのブラジルの人たちの心を代弁して書かれた歌ですね。
南:はい。私の先祖は九州から移民をしているんですけれども、ブラジルに移民をした方々は、いつか自分の夢は叶うだろうと、そういう希望を持ってブラジルで生活を切り開いて頑張ってこられたので、まさにそういう歌詞になっています。
丹:2番では舞台が〈ロンドリーナ〉になっていますね。
南:日本の方には馴染みのない場所だと思うんですけれど、サンパウロの南にあるパラナ州の街の名前で、私はそこで生まれたんです。コーヒー農園とか、農業がとても盛んな街でして、そういう話をしていましたら、歌詞にも〈ロンドリーナ〉を入れようということになりまして。歌詞のなかにある〈ファゼンダ ジ カフェ〉という言葉は、“コーヒー農園”という意味なんです。これもまったく日本の方には馴染みのない言葉だと思うんですけれど、〈あなたと出逢った ファゼンダ ジ カフェ〉、好きな方とコーヒー農園で出会ったということを歌っています。
丹:歌っていうのは最後は必ずプラス思考に持っていくから、ここは過去を思い出して頑張ろうというのではなく、〈あなたと出逢った〉という通り、ブラジルでいい人が見つかったんでしょうね。だから、歌も明るく聴こえてくるような気がします。このほかにも、ところどころにポルトガル語が入っていますけど、〈情熱のアローマ〉は?
南:〈アローマ〉は“香り”とか“匂い”という意味ですね。
丹:〈忘れないわ 今もチアーモ〉は?
南:〈チアーモ〉は“あなたを愛しています”という意味です。だから、ブラジルを舞台にした、情熱的な曲なんです(笑)。
【夢は紅白出演、そしてブラジル凱旋】
丹:デビューして丸5年経って、いろんな地方へも行ったと思うんですけど、その中で辛いことはありましたか?南:環境的に寒かったり、そういう意味で辛いと思うことはありました。北のほうのステージはやっぱり寒くて、みなさんに思うような歌がお届けできなくて悔しい思いをしたこともありました。でも、基本的に歌っている時は幸せです(笑)。
丹:反対に嬉しい時は?
南:やっぱり歌う時は毎回嬉しいんですよ。まず、自分に歌う場所があるということが嬉しくて、それをいろんな方々が見に来て下さって。毎回、ステージに立つたびに嬉しさや感動を味わっていますね。
丹:じゃあ、その人たちに報いるためにも、2008年はこの「ふるさと帰行」で頑張らなくちゃね。今後はどんなものを歌っていきたいですか?
南:いろんな曲を歌っていきたいですね。小さい頃から美空ひばりさんに憧れてまして、ひばりさんはいろんなジャンルを幅広く歌われた方じゃないですか。だから、歌手という意味で、いろんな歌にチャレンジして、たくさんの引き出しを作っていきたいなと思っています。
丹:かなこさんの声には、ちょっと渋さも含まれていて、歌謡曲みたいなものも合うんじゃないかな?
南:ありがとうございます。「ふるさと帰行」と同じ日にアルバムも発売するんですけれど、アルバムの中にはポップスも入れたり、英語の歌詞が入っている「恋におちて」という曲もあって、いろんなジャンルの曲に挑戦していますので、こちらも是非お聴きいただければ嬉しいです。
丹:最後に、今後の夢をお聞かせ下さい。
南:まずひとつは、紅白歌合戦に出場することですね。毎年ブラジルでも生放送されているんですよ。日本は夜に放送されてますけれど、ブラジルは朝なんです。だからお昼に“よいお年を”って(笑)。その紅白歌合戦に出演して、ブラジルにいる家族にも頑張っている姿を見せてあげたいんです。それと、もうひとつは、ブラジルで凱旋コンサートを開けるようになりたいですね。
丹:それは是非叶えて欲しいですね。頑張って下さい。
南:頑張ります! ありがとうございます!
[ 南かなこ / プロフィール ]
1981年生まれ。ブラジル・サンパウロ市出身。2003年「居酒屋サンバ」でデビュー。同年末に“日本有線大賞新人賞”“日本レコード大賞新人賞”を受賞。誰からも愛される明るいキャラクターを活かし幅広いジャンルで活躍。これまでにシングル6枚、アルバム1枚を発売。デビュー6年目を迎える2008年は、1月23日にシングル、アルバムを同時発売。公式サイト
http://www.sachiko.co.jp/minami.php
『ふるさと帰行』(c/w:愛愁ルンバ)
CD:COCA-16030 カセット:COSA-1944 ¥1,200(税込)
『かなこの2枚目のアルバム』
CD:COCP-34691 ¥2,300(税込)
共にコロムビアレコード 1月23日同時発売


