2007年10月01日

第七回のゲスト:藤あや子さん

丹まさとと語る 演歌もう一杯!

第七回のゲスト:藤あや子さん
今回のゲストは、妖艶な歌で多くのファンを魅了し、小野彩(このさい)のペンネームで作詩作曲も手掛ける藤あや子さん。丹氏も絶賛するその詩世界にググッと迫りました。(写真:錦谷和智)


【民謡から演歌へ】
:角館で生まれ育って、民謡を習っていたんですよね?
:はい。でも最初は踊りだったんですよ。民謡の手踊りというのが秋田にはあって、その踊りを10歳からやってまして。歌を始めたのは比較的遅かったんです。それまではアイドル好きで、百恵ちゃんのファンで、ポップス志向だったんですけど、民謡の世界に入ってからは、やっぱり民謡も歌えないと一座についてまわれないので勉強しました。コブシはここで3つまわすとか、毎日2時間とか民謡を聴きながら、大学ノートに自分なりの解説をしまして。それまではコブシも何もなかったんですよ、アイドル系を目指してましたから(笑)。それから一年くらい経って、ようやく民謡らしくなったかなと思った頃に、日本一の民謡の師匠につきまして、そこから歌を本格的に習ったんです。それが21歳でしたね。
:それがどうして演歌に変わったんですか?
藤あや子:今の私があるのは猪俣公章先生のおかげで。ちょうど民謡を始めた21歳のときに、オーディションにサクラで出たことがあったんですけれど、そのときにいた猪俣先生が「あの子だ!」って言ってくださって。先生がすごく熱心に「東京に出て演歌歌手にならないか?」って。でも私は民謡歌手を目指そうと思っていたので、お断りしていて。24歳のときにNHKの「勝ち抜き歌謡天国」という番組に、「実力を試すためにやってみないか?」って猪俣先生に言われて出場することになったんですが、あれよあれよと言う間に優勝してしまって。その放送があった翌日から、いろんなプロダクションの方から連絡があって。自分の人生が変わってしまったというか、大騒ぎになってしまって。それでもまだ「東京には怖くて出れないわ」っていう気持ちがあったんですけど、一週間後くらいに、当時CBSソニーで松田聖子さんを見出した若松さんというプロデューサーの方から連絡が来て。「あ、ソニーっていうのは、百恵ちゃんのレコード会社と一緒だ」「百恵ちゃんがいたレコード会社だから間違いないかな」と思って(笑)、「秋田にいながら歌手になれませんか?」って相談したんです。それで村瀬真奈美という名前でデビューしたんですけど、やっぱり秋田にいながらでは思うようにいかなくて。「このまま終わりたくないな」と思って、デビューして1年経ってから、「やっぱり上京します」って(笑)。28歳で藤あや子として再デビューしたんです。

【本来の情愛を歌った「紅い糸」】
:藤さんは詩も書かれるんですよね。新曲の「紅い糸」は、〈死にたいなんて 男のあんたに/言って ほしくなかったわ〉〈獣みたいに 抱きしめて〉という詩から「紅い糸」に繋がる、すごく変わった方向に行ってるんだよね。普通ならば、〈見知らぬところで二人の愛を作りましょう〉っていう方向に持っていくのが今までのパターン。好きで好きで、でも添えない二人が、毎晩のように会って、せんべい布団で愛を紡いでも、こんな暮らしは……、もう死にたい、そんなこと言わないで、私を強く抱きしめて、そして「紅い糸」がきてるでしょ。これは素晴らしいなと。
:ありがとうございます。先生にそういっていただけるとすごく嬉しいです。
:いや、僕ね、とてもいい歌だと思って。〈冷えた 刃を 突き刺して〉なんてね、"殺してくれ"ということをこの表現ね、「あ〜、相当考えてるな」と思ったんです。
:歌がとにかく好きで、いろんなジャンルの歌を聴いているんですけど、特に詩や言葉に関しては中島みゆきさんがすごく好きで。男性だったらそこまで落とさないでしょ、っていう突き刺さる詩が多くて、私もああいう歌を作ってみたいっていうのがずっとありました。学生の頃は、「泣きたいときには中島みゆきさん」ってよく言っていて。もう辛くて辛くて泣きたいときには、「今日は中島みゆきさん聴いて寝るから」とか言って、思いっきり泣いて、すっきりして次の日にがんばる(笑)。だから、きっと影響されている部分はあると思いますね。
丹まさと:「紅い糸」では、聴いた方にどんな気持ちになってほしいですか?
:「紅い糸」ってやっぱり永遠のテーマで、「これ本当に紅い糸かな?」って、常に潜在意識の中で考えている部分があると思うんです。最近は男性が弱気になっているので、中途半端な気持ちじゃいけないよ、という意味も込めました(笑)。もっと強く私を引っ張っていて、っていう気持ちで愛する人に、本当に命を捧げてまでも愛して欲しい、それが本来の男と女の情愛じゃないかなって思います。

【しだれ桜とソメイヨシノ】
:ずっと小さな頃から角館にいて、しだれ桜が咲いたり散ったりしているのを見ていると思うんだけど、読者のみなさんに、角館の一番きれいな時期はいつか教えて欲しいんです。
:それはやっぱり桜の時期が一番きれいですね。
:桜の満開? 桜の散るとき?
:私は散るときがすごく好きです。それはもう本当に吹雪のよう。よく舞台とかでバァーッと桜吹雪がありますよね。あれをすべて生の花びらにしたような感じです。角館の武家屋敷には、そのほとんどが天然記念物になっている約400本のすごく大きなしだれ桜があるんですけど、もう本当に素晴らしいんです。ワァーッと簾のようになっている桜が、ハラハラと色っぽく、それこそ妖艶に散っていくんです。2キロに渡る桧木内川の土手にはソメイヨシノがあるんですが、それもブワァーッと豪快に舞い散るんです。はんなりと散るしだれ桜と、豪快に舞い散るソメイヨシノ。その散り際の違いをぜひ御覧頂きたいです。この両者ですね、角館は。
:そういうのを見て育っているのが作詩にも影響しているんでしょうね。
:してますね〜。私の通っていた小学校は武家屋敷の中にあったんです。本当にそこらじゅうが絵になる場所で、天気が良いと先生が「じゃあ、今日はスケッチブックを持って、武家屋敷を写生しに行こう」ということもありました。今思うとすごい贅沢なことをしていたと思いますね。だから美しいものには敏感です。やっぱり男性でも女性でも、佇まいも美しく生きてほしいと思いますね。


【藤あや子 / プロフィール】
1961年生まれ。秋田県仙北郡(現・仙北市)角館町出身。民謡歌手としてステージ活動をするなか、1985年にNHK「勝ち抜き歌謡天国」決勝大会で優勝。1989年に「おんな」でデビュー。20万枚を越えるヒットとなり、数々の新人賞を受賞。ミリオンセラーとなった「こころ酒」「むらさき雨情」など、数々のヒット曲を発表している。
藤あや子『紅い糸』
藤あや子 『紅い糸』
CD:SRCL-6640 カセット:SRSL-3635
各¥1,200(税込) ソニー・ミュージックレコーズ
発売中
公式サイト http://gallery-aya.com
posted by staff at 14:57| 対談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする